十味敗毒湯はニキビに効果がある?効果と副作用について解説

 

肌トラブルに悩む多くの方にとって漢方薬は選択肢の一つとして考えられています。

特に「十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)」はニキビや湿疹などの皮膚疾患に使用されることがあります。

しかしその効果や副作用について正しく理解することが重要です。

この記事では十味敗毒湯の効果や副作用などについて現在わかっていることを科学的な観点から解説します。

漢方薬による治療を検討されている方やすでに服用されている方にとって参考となる情報をお届けします。

十味敗毒湯とは

十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)は日本の伝統的な漢方薬の一つです。

その名前が示す通り10種類の生薬から構成されています。

主な成分には桔梗(ききょう)柴胡(さいこ)川芎(せんきゅう)茯苓(ぶくりょう)甘草(かんぞう)などが含まれています。

この漢方薬は主に皮膚疾患の治療に用いられ、皮膚科や漢方専門の医療機関で処方されることがあります。

特にニキビや湿疹蕁麻疹などの症状に対して使用されることが多いようです。

十味敗毒湯の効果

 

 

十味敗毒湯は様々な皮膚トラブルに対して使用されています。

近年の科学的研究により、その効果について徐々に明らかになってきています。

主な効果について、科学的根拠とともに見ていきましょう。

湿疹とアトピー性皮膚炎への効果

慢性湿疹とアトピー性皮膚炎に対する十味敗毒湯の効果を示す臨床研究が報告されています。

この研究では十味敗毒湯がクレマスチンフマル酸塩(抗ヒスタミン薬)と同程度の効果を示しました。

慢性湿疹患者の64.7%、アトピー性皮膚炎患者の50%に中等度以上の改善が見られ、十味敗毒湯が湿疹やアトピー性皮膚炎の症状緩和に有効である可能性を示唆しています。

ニキビ(尋常性ざ瘡)への効果

ニキビの原因の一つとされるPropionibacterium acnes(P. acnes)による皮膚炎に対する十味敗毒湯の効果を調査した研究があります。

この研究では、十味敗毒湯がP. acnesによって誘発された皮膚炎を抑制し、さらにマクロファージの機能を向上させる可能性が示され、十味敗毒湯がニキビの炎症を抑える効果を持つ可能性を示唆しています。

また、尋常性ざ瘡(にきび)に対する十味敗毒湯の効果を調査する臨床試験も行われています。

炎症性皮疹の数の変化を主要評価項目としており、十味敗毒湯のニキビに対する効果をより詳細に検証することが期待されています。

掌蹠膿疱症への効果

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は手のひらや足の裏に小さな膿疱ができる慢性の皮膚疾患です。

十味敗毒湯の掌蹠膿疱症に対する効果を示す臨床研究が報告されています。十味敗毒湯の服用により掌蹠膿疱症の症状が改善したことが示されました。

特に、PPPASIスコア(掌蹠膿疱症の重症度を評価する指標)の有意な減少が観察されています。

抗炎症作用

上記の研究結果から、十味敗毒湯には抗炎症作用があると考えられています。

特にP. acnesによる皮膚炎の抑制やマクロファージ機能の向上は十味敗毒湯の抗炎症効果を裏付けています。

抗炎症作用により様々な皮膚疾患に対する十味敗毒湯の効果の基盤となっている可能性があります。

その他の効果

血行促進や新陳代謝の活性化、ホルモンバランスの調整などの効果も一部で言われていますが、これらについては現時点で十分な科学的根拠が得られていません。

これらの効果については、今後のさらなる研究が待たれます。

以上の研究結果は、十味敗毒湯が様々な皮膚疾患に対して一定の効果を持つ可能性を示しています。

ただしこれらの研究の多くは比較的小規模であり、より大規模で長期的な研究によってさらなる検証が必要です。

また、個人の体質や症状によって効果の現れ方には差があるため、使用する際は医師や薬剤師と相談の上、適切に使用することが重要です。

十味敗毒湯の効果が出るまでどれくらい?

十味敗毒湯の効果が現れるまでの期間は個人の体質や症状の程度によって異なります。

一般的には以下のような経過が見られることが多いようです。

  • 服用開始から1〜2週間

   この期間は体が漢方薬に慣れる時期です。効果はまだ感じられないかもしれません。

  • 服用開始から2〜4週間

   多くの人がこの時期から徐々に効果を感じ始めるようです。肌の状態が少しずつ改善していく様子が見られることがあります。

  • 服用開始から1〜3ヶ月

   継続的な服用により より顕著な効果が現れる時期とされています。

ただしこれらはあくまで一般的な目安であり個人差が大きいことに注意が必要です。

また効果を感じるまでの期間が長くても副作用が出ていない限り医師の指示なく服用を中止しないことが重要です。

十味敗毒湯の副作用

 

 

十味敗毒湯は比較的安全性の高い漢方薬とされていますがすべての医薬品と同様に副作用のリスクがあります。

主な副作用と注意点をまとめます。

消化器系の副作用

  • 症状:腹痛下痢胃部不快感など
  • 頻度:比較的多い
  • 注意点:胃腸が弱い方や空腹時に服用すると発生しやすくなることがあります。
    食後に服用するなど服用のタイミングを調整することで改善する場合があります。

皮膚症状

  • 症状:発疹かゆみなど
  • 頻度:まれ
  • 注意点:アレルギー反応の可能性があります。
    症状が現れた場合はすぐに医師に相談してください。

偽アルドステロン症

  • 症状:むくみ血圧上昇カリウム値低下など
  • 頻度:まれ
  • 注意点:甘草を含む他の薬剤と併用するとこの症状のリスクが高まる可能性があります。
    長期服用の場合は定期的な血液検査をすることが推奨されます。

肝機能障害

  • 症状:倦怠感食欲不振黄疸など
  • 頻度:非常にまれ
  • 注意点:重篤な副作用として報告されています。これらの症状が現れた場合はすぐに医療機関を受診してください。

 

これらの副作用は以下のような場合に発生リスクが高まる可能性があります。

  • 用法・用量を守らない場合
  • 甘草を含む他の薬剤と併用する場合
  • 個人の体質に合わない場合
  • 長期間にわたって大量に服用する場合

副作用のリスクを最小限に抑えるためには以下の点に注意することが重要です。

  • 医師や薬剤師の指示に従い適切な用法・用量を守る
  • 他の薬剤との相互作用に注意しすべての服用中の薬について医師や薬剤師に伝える
  • 体調の変化に注意を払い気になる症状があれば速やかに医療機関に相談する
  • 定期的な健康診断を受け特に長期服用の場合は肝機能や電解質のチェックを行う

十味敗毒湯は多くの人にとって比較的安全に使用できる漢方薬ですが個人の体質や健康状態によって反応が異なる場合があります。

そのため使用前に医師や薬剤師に相談し自分に適しているかどうかを確認することが大切です。

十味敗毒湯で痩せた」は本当?

インターネットで「十味敗毒湯」を検索すると「十味敗毒湯 痩せた」という検索サジェストが表示されることがあります。

しかし十味敗毒湯は本来ダイエットを目的とした漢方薬ではなく減量効果は医学的に認められていません。

「痩せた」という情報が広まっている理由として以下のような可能性が考えられます。

  • むくみの改善
    十味敗毒湯には利水作用があるとされており体内の余分な水分が排出されることでむくみが改善される可能性があります。
    これにより一時的に体重が減少したり体型がすっきりしたように感じられたりすることがあるかもしれません。
  • 便通の改善
    十味敗毒湯には軽い緩下作用があるとされており便秘が改善されることがあります。
    これにより腹部のはり感が軽減されることがあるかもしれません。

ただしこれらの効果については科学的な根拠が十分ではありません。

また仮にこれらの効果があったとしても体重そのものが大きく減少するわけではありません。

健康的な減量を目指す場合は十味敗毒湯に頼るのではなく、バランスの取れた食事と適度な運動を心がけることが大切です。

十味敗毒湯はあくまで皮膚トラブルの改善を目的とした漢方薬であり減量効果を期待して服用するものではないことを理解しておきましょう。

十味敗毒湯と体臭の関係

 

 

十味敗毒湯を服用すると体臭が変化したという報告を目にすることがあります。

しかしこれについては科学的な根拠が不足しており個人の体験に基づく情報である可能性が高いです。

体臭の変化を感じた場合考られる要因としては以下のようなものがあります。

  • 代謝の変化
    漢方薬の服用により体内の代謝が変化し それに伴って体臭が一時的に変化する可能性があります。
  • 心理的要因
    新しい薬を服用することで体に対する意識が高まり普段は気にしていなかった体臭を意識するようになる可能性があります。
  • 他の要因
    食生活の変化ストレス環境の変化など体臭に影響を与える他の要因が同時期に発生している可能性があります。

体臭の変化が気になる場合は以下のような対策を試してみるとよいでしょう。

  • 十分な水分摂取
    水分を多く摂ることで体内の代謝産物の排出を促進できる可能性があります。
  • 定期的な入浴やシャワー
    こまめに体を清潔に保つことで体臭の原因となる細菌の増殖を抑えることができます。
  • バランスの取れた食事
    野菜や果物を多く摂取し過度に脂っこい食事や刺激物を控えることで体臭の改善につながる可能性があります。

体臭の変化が長期間続く場合や気になる場合は医師や薬剤師に相談することをおすすめします。

十味敗毒湯の服用と体臭の関係については個人差が大きいため専門家のアドバイスを受けることが重要です。

漢方薬の処方について

十味敗毒湯を含む漢方薬は個人の体質や症状に合わせて処方されることが重要です。

漢方医学では「証」と呼ばれる個人の状態に基づいて最適な処方を決定します。

漢方薬の処方を受ける際は以下の点に注意しましょう。

  • 詳細な問診
    漢方医学では体質や生活習慣なども含めた詳細な問診が行われます。
    正確な情報を伝えることが大切です。
  • 継続的なフォローアップ
    定期的な経過観察や処方の調整が必要です。
    効果や副作用について医師に報告しましょう。
  • 西洋医学との併用
    必要に応じて西洋医学的な治療と併用することもあります。
    すべての服用中の薬について医師に伝えることが重要です。

漢方薬による治療に興味がある方やこれまでの治療で満足な効果が得られなかった方は専門家への相談を検討してみてください。

オンライン診療を利用できる医療機関もありますので自分に合った方法で相談してみるとよいでしょう。

まとめ

十味敗毒湯は主に皮膚トラブルの治療に用いられる伝統的な漢方薬です。

この記事で解説した主なポイントは以下の通りです。

  1. 効果
  • ニキビや湿疹の改善に一定の効果が報告されていますが大規模な研究による検証が必要です。
  • アトピー性皮膚炎や蕁麻疹への効果も示唆されていますが更なる研究が求められます。
  • 抗炎症作用があるとされていますがそのメカニズムは十分に解明されていません。
  • 血行促進やホルモンバランスの調整などの効果は科学的な根拠が不十分です。
  1. 効果の発現時期
  • 個人差が大きいですが一般的に2〜4週間程度で徐々に効果を感じ始める人が多いようです。
  • 1〜3ヶ月の継続的な服用でより顕著な効果が現れる可能性があります。
  1. 副作用
  • 比較的安全性の高い漢方薬ですが副作用のリスクがゼロではありません。
  • 消化器系の不快感皮膚症状、偽アルドステロン症肝機能障害などが報告されています。
  • 適切な用法・用量を守り定期的な健康チェックを行うことが重要です。
  1. ダイエット効果
  • 十味敗毒湯に科学的に立証された減量効果はありません。
  • むくみの改善や便通の改善による一時的な体型の変化を感じる人もいますがこれらの効果にも十分な科学的根拠はありません。
  1. 体臭への影響
  • 体臭の変化に関する報告がありますが、科学的な根拠は不足しています。
  • 体臭の変化を感じた場合は、生活習慣の見直しや医師への相談を検討しましょう。

十味敗毒湯は多くの方にとって有効な漢方薬である可能性がありますが、効果や副作用には個人差があります。

また科学的に十分に検証されていない効果も多くあります。

使用を検討される際は必ず医師や薬剤師に相談し適切な指導のもとで服用することをおすすめします。

漢方薬は西洋医学とは異なるアプローチで健康をサポートする可能性がありますが万能薬ではありません。

バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠などの基本的な健康習慣と組み合わせることで最大の効果を得られる可能性があります。

皮膚トラブルでお悩みの方は、十味敗毒湯を含む漢方治療も選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。

 

参考:

[1] 12. Skin Diseases Reference Kobayashi K, Ohkawara A. Therapeutic effect of jumihaidokuto on chronic eczema and atopic dermatitis

[2] Suppression of Propionibacterium acnes-Induced Dermatitis by a Traditional Japanese Medicine, Jumihaidokuto, Modifying Macrophage Functions - PMC

[3] Jumihaidokuto (Shi-Wei-Ba-Du-Tang), a Kampo Formula, Decreases the Disease Activity of Palmoplantar Pustulosis - PMC

[4] Jumihaidokuto (Shi-Wei-Ba-Du-Tang), a Kampo Formula, Decreases the Disease Activity of Palmoplantar Pustulosis

[5] Jumihaidokuto for acne vulgaris

 

監修医

島村泰輝

  • 2012年3月 名古屋市立大学医学部 卒業
  • 2014年4月 名古屋市立大学放射線科 入職
  • 2015年4月 名古屋市立大学大学院博士課程入学 (専攻:生体防御・総合医学分野)
  • 2019年3月 同大学院卒業、博士号取得
  • 2019年6月 株式会社エムネス 入職
  • 2022年10月 同 Medical Professional Service(医師部門)副本部長
  • 2023年7月 オンラインメディカルクリニック開業

愛知県名古屋市出身。遠隔放射線画像診断を行う傍ら、AI開発、メディカル用プロダクト開発を行う。

医療としてはその他にも内科診療、訪問診療にも従事。医療はITでさらに良くなる事を信条として様々な取り組みを行う。

物理的、時間的に医療が届きにくい層に対して医療を届けるべくオンライン診療を中心としたクリニックを開業。今後は各種専門家とともに、遠隔地であっても質の高い医療を提供するサービスを構築していく。

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