オンライン診療は、遠隔地に住む方や、忙しくて病院に足を運ぶことが難しい方々にとって特に有益な選択肢ですが、初診からオンライン診療を受ける際には気をつけたいことがあります。
今回はオンライン診療の便利な面ではなく、デメリットについて記載します。
オンライン診療の限界と対面診療への移行
オンライン診療では、身体診察や特定の検査が必要な場合、限界に直面することがあります。
また、患者さんの症状や健康状態に応じて、より詳細な評価が必要な場合もあります。
一般社団法人 日本医学会連合 が制定するオンライン診療の初診に関する提言では下記内容が記載されています。
「現状のオンライン診療には対⾯診療と⽐較した様々な技術的な限界もあります。そのことを理解した上で、適切にオンライン診療を⾏うことは、年齢に関係なく患者さんの健康⻑寿と患者さんおよびご家族の quality oflife に⼤きく貢献します。(中略)⽇本のオンライン診療には、技術的な制限による取得できる診療情報の限界、保険点数の問題など、様々な解決すべきことが残っています。⼀⽅、オンラインで診療⾏為を⾏うことは既に世界の常識であり、⽇本は ITの社会活⽤に⼤きく⽴ち遅れてしまっています。オンライン診療を含めた遠隔医療が国⺠の健康⻑寿に貢献できるようになるために、活発な議論がなされることを、⼼から期待しています。」
ここからも分かるとおり、患者さんにとって最も安全な診療が受けられるようにするには、オンライン診療の限界を知ることが重要になります。
初診からでも可能なオンライン診療には、次のような多くの利点があります。
- 迅速な医療相談: 患者さんは自宅や職場から、医師に直接健康相談ができます。
- フォローアップの容易さ: 既往症の管理や健康状態の定期的なチェックが簡単になります。
- 情報共有の効率化: 電子カルテや画像共有を通じて、迅速に医療情報を共有できます。
しかし、オンライン診療は直接面談をしていないことから、患者さんからの病歴聴取により治療内容を決定することとなります。
それにより
- 検査ができない:オンライン診療では採血をはじめとする検査を行うことが困難です。
- 急変時の対応が困難:急変した場合、症状が不安定な場合に、処置をすぐ行うことが困難な場合があります。
上記を踏まえて、先述の提言ではオンライン診療に向かない症状を紹介しています。
参照:⽇本医学会連合 オンライン診療の初診に関する提⾔
例えば
内科系の症状
1.緊急性により初診からのオンライン診療に適さない状態
(1) 呼吸器系の症状
ア 急性・亜急性に⽣じた息苦しさ、または呼吸困難
イ 安静時の呼吸困難
ウ 喀⾎(⼤量の⾎痰)
エ 急性の激しい咳
オ 喘鳴
カ 急性・亜急性に⽣じた嗄声
(2) 循環器系の症状
ア 強い、あるいは悪化する胸痛/胸部圧迫感
イ 突然始まる動悸
ウ 症状を伴う⾎圧上昇
(3) 消化器系の症状
ア 強い腹痛
イ 強い悪⼼/嘔吐
ウ 吐⾎
エ ⾎便/下⾎
(4) 腎尿路系の症状
ア 発熱を伴う腰痛、排便障害、下肢の症状を伴う腰痛
(5) その他
ア 強い痛み
という記載があり、これらは一般的に急変しうる病気や、急性期で命に関わりうる病気が想定されています。
疾患でいうと緊張性気胸、喘息発作、心筋梗塞、大動脈解離、高血圧緊急症、腸閉塞やイレウス、消化管の活動性出血、急性腎盂腎炎等になります。
これらの症状や疾患が疑われる場合は検査を受けられる対面診療を行うことが基本です。
オンライン診療を受けている際に上記の症状が出た場合は、必要に応じて特定の専門医や施設へ紹介することもあります。
処方期間の制限
初診でオンライン診療を行う場合の処方期間は、原則7日以内と制限されています。
これは、オンライン診療では対面診療ほど詳細な診察が行えないため、患者さんの安全を考慮した措置になります。
ただし、再診をされる場合は7日ではなく、長期処方も可能になります。症状にに合わせてどこまで処方日数が伸ばせるかについては相談いたします。